関西電力大飯原発3、4号機の設置許可取り消しを巡る4日の大阪地裁判決の要旨は次の通り。
【判断】
原子力規制委員会の判断に不合理な点があり、設置許可を取り消す。原告の主張する地盤安定性や津波想定に関する誤りなどは、いずれも採用できない。
【判断の枠組み】
裁判所の審理は、規制委の判断に不合理な点があるかどうかとの観点から行う。現在の科学技術の水準に照らして、規制委が使った審査基準に不合理な点があるか、判断過程に看過しがたい過誤、欠落がある場合には、その判断に基づく設置許可は違法だとするのが相当である。
【基準地震動】
設置許可基準は、重要な原子炉施設に大きな影響を及ぼす恐れのある地震でも、安全機能が損なわれる恐れがないものであるべきだ。(耐震設計の目安となる揺れの大きさである)基準地震動を策定する際には、震源の特性を主要な変数で表した震源モデルを設定しなければならない。
規制委は基準地震動を策定する際、震源断層の長さにまつわる不確かさなど、影響の大きな要素を分析し、適切に考慮すると内規で定めている。
規制委の「審査ガイド」は「(過去の地震を参考につくられた)経験式を用いて地震規模を設定する場合、適用範囲が十分に検討されていることを確認し、(平均値を出すのに使った元データの)ばらつきも考慮される必要がある」と定める。
【ばらつきの意義】
地震規模は基準地震動を策定するための重要な要素である。経験式から算出される地震規模は平均値であって、実際に発生する地震規模はそれより大きい方に外れることが当然に想定される。地震規模の設定では、平均値をそのまま使うのではなく、平均からのずれを考慮することが相当である。
ただし平均値に上乗せすることが必要かどうか検討した結果、不必要とした場合は、平均値をそのまま地震規模の値とすることも妨げられない。
このばらつきに対する解釈は、2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受けて耐震設計審査指針が改定される際、経験式より大きな地震が発生することを想定すべきだとの指摘を受けて定められた経緯とも整合する。
【判断過程に欠落】
関電は基準地震動を策定する際、地質調査などに基づいて設定した震源断層面積を経験式に当てはめて出した地震規模の値をそのまま使用。実際の地震規模が平均値より大きくなる可能性を考慮して設定する必要があるかどうかを検討せず、上乗せもしなかった。
規制委も上乗せをする必要があるかどうかについて何も検討せず、関電の設置許可申請が基準に適合し、審査ガイドを踏まえているとした。規制委の判断過程には看過しがたい過誤、欠落があるというべきだ。【共同通信】