後志管内の寿都町と神恵内村で、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査が行われる見通しとなった8日、地元住民の間では賛成、反対の立場にかかわらず「議論が不足している」との不満が広がった。周辺自治体に十分な説明がないまま事態が進んだことに、首長たちは困惑。道民からは応募への理解の一方で、北海道全体に対する風評被害への懸念の声も上がった。
「最終処分場の誘致まで目指すべきだ。でも、反対している住民に対してこそ、町の財政状況などをもっと丁寧に説明し、納得してもらわなければ、地域が分断されてしまう」。文献調査の受け入れに賛成する寿都町の浜岸雅尚さん(68)は、こう懸念する。
浜岸さんは40年以上前、寿都町に隣接する後志管内泊村のホテルで働いていた。そのころ、北海道電力泊原発(同村)の建設工事が始まり、空室が数年単位の長期契約であっという間に埋まったことを覚えている。それだけに、過疎などによる財政難を克服するには最終処分場の誘致や、その前提となり、20億円の交付金も支給される文献調査が必要だと思う。
「ただ、交付金を有効活用するためには、町民全員で知恵を出し合わなければならない。分断が生まれれば、その素地を失いかねない」(浜岸さん)
同町の片岡春雄町長は8日の記者会見で、応募を急いだ理由として「賛成、反対がエスカレートすると、どんどん溝ができる」とし、住民の分断を避ける狙いがあったと説明した。だが、町内の自営業の60代男性は「前に進めば進むほど町民同士の溝は深まる。応募前だからこそ、賛否両方の専門家による公開討論などを開いて、しっかり勉強する機会を設けてほしかった」と話す。
町内では同日、住民団体「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」などが記者会見を開いた。同会の吉野寿彦共同代表は「北海道で大きな輪をつくって、反対運動を進めていきたい」と訴えた。
【北海道新聞】