東京電力福島第一原発で発生した汚染水を浄化処理した後の放射性物質トリチウムを含む水の処分を巡り、政府が8日に東京都内で開いた意見聴取会合で、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は「わが国の漁業者の総意として、海洋放出に絶対反対」と強い口調で述べた。オンライン会議で参加した福島県水産加工業連合会の小野利仁代表も「海洋放出には断固反対」と明言した。
岸会長は海洋放出について「風評被害は必至。漁業の将来に壊滅的な影響を与えかねない」と強調。政府の担当者から風評被害払拭で重要なことを問われると、「海洋放出をしないことに尽きる」と言い切った。
小野代表は「仲買人や加工、小売業者は風評被害の最前線にいて、努力してきた。当たり前の商売をさせてください」と訴えた。
政府は4月以降、8日を含めて7回の会合を開き、福島県知事や地元首長、業界団体の代表者らから意見を聴いてきた。積極的に放出処分に賛成する意見はなく、漁業や水産業者は海洋放出に反対を表明。福島県内の市町村議会でも、放出反対の意見書が多く出されている。
東電は処理水を保管する原発構内のタンクが、2022年夏ごろには満杯になると推計。放出に必要な施設の整備に2年はかかる見込みで、放出処分となれば方針決定までの時間は限られている。菅義偉首相は「できるだけ早く決めたい」と述べるにとどめ、具体的な見通しを示していない。【東京新聞】