関西電力は28日、取締役会を金品受領問題の多くが起きた福井県美浜町にある原子力事業本部で初めて開きました。組織の閉鎖性を払拭(ふっしょく)するねらいがあります。
関西電力は当時の経営幹部などが福井県高浜町の元助役から巨額の金品を受け取っていた問題が去年、明らかになり、調査した第三者委員会は受領問題の多くが原子力事業本部で起きたとして組織の閉鎖性を指摘していました。
これを受けて、関西電力は28日、美浜町にある原子力事業本部で取締役会を開きました。
大阪市にある本店以外で取締役会を開くのは初めてで、組織の閉鎖性を払拭するねらいがあるとしています。
取締役会には元経団連会長の榊原定征会長や森本孝社長らが出席しました。
冒頭、榊原会長は「金品の受け取りなど大半の行為はこの原子力事業本部で行われた。実効性の高いガバナンスの実現につなげていきたい」と述べました。
その後、社外取締役7人が現場の社員と意見交換を行ったということです。
終了後、榊原会長は記者団に対し「現場の社員が信頼回復に向けて真剣に取り組んでいることを知ることができて有意義だった」と述べたうえで、福井での取締役会を定期的に開催する考えを示しました。
森本社長「新しい関電つくっていけるよう取り組む」
関西電力の森本孝社長は、取締役会のあと、大阪市の本店で記者会見を開きました。
この中で、取締役会を初めて福井県美浜町にある原子力事業本部で開催したことについて、森本社長は「組織の閉鎖性を払拭し、風通しのよい健全な組織風土を創生するとともに、より実効性の高いガバナンスを実現するために行った」と述べました。
そのうえで「きょう社外取締役からいただいた客観的な意見を踏まえて、業務改善計画の実行状況を検証しながら改善策を加えて、さらなるレベルアップを図り、新しい関西電力をつくっていけるよう全力で取り組んでいきたい」と述べました。
金品受領問題の経緯
前代未聞の不祥事が発覚したのは1年前の9月27日。
当時の関西電力の岩根茂樹社長が、記者会見で、会長や社長などの経営幹部や社員合わせて20人が、福井県高浜町の森山栄治 元助役からおよそ3億2000万円相当の金品を受け取っていたことを明らかにしました。
およそ1週間後に八木誠会長と岩根社長が再び記者会見を開き、金品受領の詳細を公表しました。
受け取った金品は現金や商品券に加え、スーツの仕立券、小判型の金貨や金杯、アメリカ・ドルなどだったと説明しました。
また、常務と副社長の2人の受領額がそれぞれ1億円を超えていたことも明らかにしました。
この問題を調査するため、去年10月、元検事総長の但木敬一弁護士をトップとする第三者委員会が新たに設けられました。
調査の最終報告書がまとまったのはことし3月。
金品を受け取っていた社員が75人と、これまでに公表された数から大幅に増え、金品の総額は3億6000万円相当に上ることが明らかになりました。
また、元助役に対し、工事を発注する前に工事内容や発注予定額を伝えたうえで約束に沿って発注するなど便宜を図っていたことを認定しました。
また、報告書では原子力事業本部の閉鎖性についても指摘。
2004年に起きた原発事故をきっかけに大阪の本店にあった原子力事業本部は福井県美浜町に移転され、そこで閉鎖的な村社会が形成されていったとしています。
第三者委員会の但木委員長は記者会見で「原子力事業本部が病根だった」「独立王国のようになっていた」と厳しいことばを使って、今回の問題の根底には原子力事業本部の体質があるという認識を示しました。
金品を受け取った20人の役員などのうち、少なくとも16人が原子力事業本部に所属していたことがありました。
報告書がまとまったことを受けて当時の岩根社長は辞任し、後任として、森本孝社長が就任しました。
しかしその直後に新たな不祥事が明るみに出ました。
会社の業績が悪化していた時期にカットした役員報酬の一部を役員が退任したあとにひそかに補填(ほてん)していたというのです。
関西電力はことし6月、会社として八木前会長ら5人の旧経営陣に対し、合わせて19億3600万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
そしてことし6月の株主総会で、会社の透明性を高めるため、取締役13人のうち過半数の8人を社外の人材とすることや経営のチェック機能を高める目的で社外取締役が中心となって人事や報酬などを決める「指名委員会等設置会社」に移行することが承認され、新たなスタートを切りました。【NHK】