関西電力の金品受領問題が発覚してから26日で1年を迎える。問題を時系列で振り返る。
福井県高浜町の元助役(19年3月に死去)から役員が金品を受け取っていた問題で、関電の社内調査委員会が調査を始める。
■9月
社内調査が終了。「不適切だが違法ではない」として対外的に公表することを見送る。
■19年9月26日
金品受領問題が報道により表面化する。関電は「特定の人物から金品を渡され、一時的に各個人の管理下で返却の機会をうかがいながら保管していたが、現時点では返却を完了している」と説明。
■9月27日
記者会見で頭を下げる関西電力の岩根茂樹社長(2019年9月27日、大阪市)
関電が記者会見を開き、役員ら20人が計3億2000万円相当の金品を受け取っていたと公表。11~18年にお中元、お歳暮、社長就任祝いなどの名目で、現金やスーツ仕立券などを受領したという。
岩根茂樹社長(当時)は「一時的に保管していた。地元有力者で返却を拒まれたので関係悪化を恐れた」と説明した。
■10月2日
社内調査を公表、1億円超を受け取っていた元役員もいた。
■10月9日
経営責任を取るとして八木誠会長(当時)が同日付で辞任、岩根社長は第三者委員会の調査結果後に辞任すると表明した。
辞任が決まり、記者会見する関西電力の八木会長(左)と岩根社長 (2019年10月9日、大阪市)
■20年3月14日
第三者委が調査結果をまとめ、75人が総額3億6000万円相当を受け取っていたと公表。委員長を務める但木敬一・元検事総長は「社風を一変してもらいたい」と厳しく批判した。
森本孝副社長が社長に昇格。「閉鎖性やガバナンスが利かないという状況を早急に改革していかなくてはいけない」と強調した。
記者会見する第三者委員会の但木敬一委員長(左から2人目)ら(2020年3月14日、大阪市)
■3月16日
東日本大震災後の経営不振で減額した役員報酬の一部を、役員退任後に補填していたと公表。計18人、総額2億6000万円に上った。
■3月30日
第三者委の提言に沿い会長職に外部人材を招くとし、榊原定征・前経団連会長を迎えると発表した。榊原氏は記者会見し、「今般の問題は信頼を損なうゆゆしき事態で危機的状況だ。遅くとも2年ほどで信頼を回復できるよう全力を注ぎたい」と強調した。
記者会見する榊原氏(右)と関西電力の森本社長(2020年3月30日、大阪市)
■4月28日
外部の経営監視を強めるため、指名委員会等設置会社への移行を正式に決める。日本の会社形態では最も経営監視が厳しい仕組みだ。
取締役は従来より4人多い13人体制に変え、社外取は2倍の8人とする。新日鉄住金(現・日本製鉄)社長を務めた友野宏氏らを新たに招く。筆頭株主の大阪市が求めた橋下徹元市長を社外取とする案は拒否した。
■6月8日
関電の監査役会が設置した取締役責任調査委員会(委員長=才口千晴弁護士)が調査報告書を公表。「対応義務を尽くしていなかった」と指摘し、岩根前社長や八木前会長ら旧経営陣5人の善管注意義務違反を認定した。関電に総額で約13億円の損害を生じさせたと判断した。
■6月16日
関電が大阪地裁に提訴。善管注意義務違反があったとして、八木前会長や岩根前社長ら5人に計19億3600万円の損害賠償を求めた。弁護士による調査費用などを加えた。
■6月25日
金品受領問題が発覚してから初めての定期株主総会を開く。指名委員会等設置会社への移行や、新会長に内定していた榊原氏を取締役に迎える人事案の承認を得る。森本社長の取締役選任への賛成比率は59.6%だった。
■7月22日
関電子会社の元社長が商品券計約400万円分を受領していたと、関電が新たに公表。
■8月17日
役員報酬の補填にからみ、関電のコンプライアンス委員会(委員長=中村直人弁護士)が調査報告書を公表。2015年10月ごろに森詳介会長(当時)の指示で補填の検討が始まったとし、森氏ら3人について取締役としての善管注意義務違反を認定した。【日本経済新聞】