沖縄電力を除く大手電力9社は28日、送電線の利用料金である「託送料」を10月から改定すると発表した。原子力発電所の事故に備える費用や廃炉費用を転嫁し、東京電力ホールディングスや関西電力など一部の大手電力は託送料を引き上げる。引き上げた託送料は国民の電気料金に上乗せする見通しだ。
各社は同日、新たな託送料を経済産業相に申請した。託送料に転嫁される賠償費用の総額は約2.4兆円で、40年間にわたり上乗せされる。
新電力を含む電力の小売事業者は、大手電力に対し託送料を支払う必要がある。託送料の引き上げに伴う小売事業者の負担分は、将来的に国民の電気料金の値上げを通じて回収される。
東電は1キロワット時あたり3銭、関電は同5銭の値上がりとなる。仮に託送料の上昇分が全て電気料金に転嫁された場合、関東の一般家庭は月々8円ほどの値上がりにつながる可能性がある。託送料の改定は10月に行われるが、各社は新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し値上げを21年10月まで延期する。
一方、今回の改定ではこれまで託送料に上乗せされていた、使用済み核燃料の再処理に使う費用が削減される。これに伴い北海道電力、中部電力、北陸電力、中国電力は託送料を引き下げる。
原発事故を想定して賠償費用を積み立てる制度は、東京電力福島第1原発事故後に制定された。原発の負担費用を託送料で回収することを巡っては、一部の新電力から反発の声もあがっている。【日本経済新聞】