東北電力は25日、仙台市青葉区の本店で株主総会を開いた。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故以降、9年余り停止している女川原発(宮城県女川町、石巻市)と東通原発(青森県東通村)の再稼働を目指す方針を重ねて強調。市民団体「脱原発東北電力株主の会」が原子力発電の禁止などを求めた6議案は、いずれも否決された。
東北電が保有する原発4基のうち、女川2号機は2月、原子力規制委員会の審査に合格した。会社側は2020年度を計画していた安全対策工事の完了時期を22年度に見直したことを説明。安全対策工事費は資材調達の工夫や効率化などにより、3400億円程度で変わらないと報告した。
女川、東通両原発の安全対策工事費として19年度末現在、計2460億円を支出したことも示した。東通原発については現時点で21年度の安全対策工事完了を目指している。
4月に就任した樋口康二郎社長は「安全確保を大前提に、地域のご理解を頂きながら早期再稼働を目指す」と述べた。
株主提案に絡み、株主からは「炉心溶融時の対策が不十分で安全性が保証されない」として再稼働に反対する意見が出たほか、原発に関する膨大なコストが経営を圧迫することを懸念する声が相次いだ。採決では宮城県美里町などが賛成したが、全て90%以上の反対で否決された。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、東北電は総会を初めて本店で開催した。入り口で検温を実施したほか、受付には飛沫(ひまつ)を防ぐパーティション(間仕切り)を設置。株主の座席は間隔を空けた。
快適で安全安心なサービスを提供する「スマート社会」の実現に向けた定款の一部変更など、会社提案の6議案は可決された。出席した株主は1989年以降で最も少ない141人、所要時間は震災以降で最短の2時間だった。【河北新報】