茨城県東海村にある首都圏唯一の原発・東海第二原発は、おととし再稼働の前提となる新しい規制基準の審査に合格していますが、防潮堤の建設などの安全対策工事を行っているほか、周辺の6つの自治体に事前に運転の了解を得なければならないため、再稼働の時期は見通せていません。
こうした中、先月、再稼働の是非を問う住民投票の実施を目指す市民グループ「いばらき原発県民投票の会」が、条例の制定を求める文書と、賛同する8万6000人余りの署名を県に提出しました。
これを受けて茨城県の大井川知事は、8日開会した定例県議会に知事としての意見書を添えて、条例案を提出しました。
意見書では「意見を聞く方法については県民投票を含めさまざまな方法があることから、慎重に検討していく必要があると考えている」としたほか、課題として「開票事務の主体が不明確だ」としています。
また、市民グループの徳田太郎共同代表も意見陳述を行い「東海第二原発の再稼働は社会的にも、経済的にも、私たちの生活や茨城の未来に大きな影響を及ぼす事柄だ」と訴えました。
県議会では今月18日に2つの常任委員会による「連合審査会」を開き、市民グループの代表者や有識者、資源エネルギー庁や原子力規制庁の職員などを参考人として呼んで意見を聞いたあと、防災環境産業委員会で採決を行う予定です。
議会で可決された例なし
福島第一原子力発電所の事故のあと、原発の再稼働の是非を問う住民投票を行う条例の制定を求める動きは、各地で相次いでいますが、実際に議会で可決された例はありません。
原発事故のあと、条例の制定を求めるのに必要な数の署名が集まり、住民投票を行うための条例案が都道府県の議会に提出されたケースは、平成24年に東京都と静岡県、平成25年に新潟県でありましたが、いずれも否決され、投票は実施されませんでした。
最近では去年3月に宮城県議会で、東北電力女川原発2号機の再稼働の是非を問う県民投票条例案が採決されましたが、自民・公明両党などの反対多数で否決されています。
一方、沖縄県ではおととし、アメリカ軍普天間基地の移設計画に伴う名護市辺野古沖の埋め立てへの、賛否を問う県民投票の条例案が議会で可決され、去年、投票が実施されています。
県民投票の会「前向きに検討してもらい条例成立を」
県議会で意見を述べた「いばらき原発県民投票の会」の徳田共同代表は、本会議のあと取材に応じ「意見陳述の機会をいただけたというのは、議会としてしっかり議論をしていくという思いが反映されての決定だと思い、感謝している。知事の意見は決してこの条例案に反対ということではないと思われる。議員の皆さんには前向きに検討してもらい、この県民投票条例を成立させてほしいと思っている」と述べました。
【NHK】