関西電力が30日、公表した業務改善計画には、社外取締役の権限を強化する「指名委員会等設置会社」への移行など「外部の目」を採り入れる施策がならんだ。ただ、長年続いてきた内向きの企業文化の是正は容易ではない。
「信頼回復に向けたスタート地点だ。計画の実行に全力を尽くし、新しい関電を創生していく」。森本孝社長は同日夕の記者会見で再出発を誓った。
関電の第三者委員会(委員長=但木敬一・元検事総長)は3月の報告書で、役員ら75人が福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から総額3億6千万円相当の金品を受け取る一方、関係企業への工事発注を事前に約束していたことを指摘。
長年続いた森山氏との不適切な関係に加え、関電が社内調査の結果を取締役会に報告せず、公表もしなかったことも「極端な内向き文化」と批判した。
この反省に立ち、改善計画では過半数を社外取締役が占める委員会で役員の人事や報酬を決める「指名委員会等設置会社」に経営体制を移行することを盛り込んだ。取締役会の下に社外委員が過半数を占める「コンプライアンス委員会」を新設し、弁護士や公認会計士も加わって工事発注や地元自治体への寄付金などを毎月、チェックする「調達等審査委員会」もつくる。
また、金品を受け取った役員に株主の一部が損害賠償を求めている件でも、30日に外部弁護士だけでつくる「取締役責任調査委員会」を設置した。株主の要求に応じて損害賠償させるべきかどうか、第三者の目で判断する方針だ。
過去の経営危機時にカットしていた報酬の一部(18人で計2億6千万円)をひそかに補塡(ほてん)していた問題については「正当性を認めることができず、全額回収をする。コンプラ委員会で検証もしていきたい」(森本社長)とした。退職役員が返還に応じない場合は補塡を決めた当時の取締役に肩代わりさせるという。
関電は今後、改善計画に沿った改革を社外人材の力を借りて実施し、信頼回復に努めることで原発の再稼働や、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の候補地選びなどを予定通り進める考え。ただ、関電はこれまでも著名な経営者らを外部役員に招いてきており、「器を作っても、魂が入るかは実際の運用次第だ」(企業法務の専門家)との声もある。地に落ちた信頼の回復は一筋縄ではいかなそうだ。(西尾邦明)
会長就任の榊原氏「再生させたい」
関西電力の会長に就任する前経団連会長の榊原定征氏(77)は30日夜、関電本社で記者会見を開いた。榊原氏は一連の金品受領問題について、「信頼を大きく損ない、創業以来の危機的状況だ。再発防止策の遂行などを通じて、関電を再生させたい」と語った。
榊原氏は東レで社長、会長を歴任し、2014~18年に経団連の会長を務めた。森本孝社長は「日本を代表する経営者で、(政府の審議会のトップを務めるなど)エネルギー政策にも造詣(ぞうけい)が深い」と選任の理由を語った。
榊原氏は会見で関電の企業体質について聞かれ、「お客様本位の精神が忘れ去られている。企業倫理や法令順守が第一、という考え方を社員に植え付けていきたい」と答えた。原発の再稼働については「(方針は)社長らが決めることだが、日本全体の電源構成としては20~22%の原発の稼働が必要」と述べた。第三者委員会は3月に外部からの会長起用を提言したが、関電はそれ以前から社外取締役らで構成する「人事・報酬等諮問委員会」で人選を進めてきたという。【朝日新聞】