東京電力福島第一原発で、放射性物質をたっぷり吸った高線量の土囊(どのう)が廃炉作業の足かせになっている。事故発生から9年。汚染水の濃度を下げる緊急対策として建屋の地下に投入されたが、ここにきて調査が進み、危険な存在になっている実態がみえてきた。東電は建屋からの水抜き作業を延期して、安全に片付ける方法を検討している。
問題の土囊は、炉心溶融した1~3号機そばの二つの建屋の地下に計約26トンある。放射性セシウムの吸着材として使われた鉱物「ゼオライト」が詰まっている。表面の放射線量は最高で毎時3~4シーベルト。1時間浴びれば半数の人が亡くなるとされるほどの高さだ。
東電は事故直後、大量に生じる高濃度汚染水を一時的にためるため、二つの建屋を貯水槽代わりにした。その際、水に含まれる放射性物質を少しでも減らそうと、地下の床面に置いたのがゼオライトの土囊だ。
汚染水の底に沈む土囊への関心はやがて薄れていった。存在が再び浮上したのは2018年12月。二つの建屋にためていた汚染水を抜くための準備として、東電が建屋1階から線量計を降ろして測定中、床面近くで高い線量を確認した。その後、土囊からゼオライトを採取して調べると、セシウム濃度が1グラムあたり約1億3千万ベクレル程度もあった。高濃度汚染水がさらに濃縮されたような状態だった。
このまま水を抜くと高線量の土囊がむき出しになるとして、東電は20年までに終える予定だった二つの建屋の水抜きを、今年に入って23年度以降に遅らせた。ゼオライトを地上階から吸引して容器に保管する方法や、水中で容器に入れて仮保管する方法などを検討しているが、危険で困難な作業は避けられない。
廃炉作業を監視する原子力規制委員会の検討会で、東電は「様々な知見を集めて検討中」と説明。規制委側からも「取り除くべきだが、そう単純ではない」などの意見が出ている。【朝日新聞】