広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転を差し止める決定を出したことについて、2014年に関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止めを命じた樋口英明・元福井地裁裁判長(67)は「原発を審理する裁判官に与える心理的影響はものすごく大きい」と語った。
かつて、原発の運転などを巡る裁判は住民側がほとんど敗訴してきた。東京電力福島第一原発事故後、樋口さんをはじめ数人の裁判長が、原発の運転を認めない司法判断を下した。だが、いずれもその後、覆った。
樋口さんは今回の決定について「再稼働を認める判断が続いているにもかかわらず、活断層と火山の両方で原発を止める判断を下した影響は大きい。原子力規制委員会の判断が原発の安全性を確保する内容になっているか、踏み込んで判断した。前例主義に終止符を打った」と評価した。
差し止めを命じた森一岳裁判長について「前例主義にとらわれず事件と率直に謙虚に向き合い、自分の頭で考える裁判官だ」と話した。
樋口さんは、14年に大飯原発の運転差し止めを認める判決を出した後、福井地裁から名古屋家裁に異動。15年にも職務代行で高浜原発3、4号機の運転差し止めの仮処分を出した。17年8月に退官。その後は各地で運転差し止めの判断に至った理由などを講演し、原発の耐震性は不十分だなどと訴えてきた。
昨年12月に大阪府高槻市であった講演会で、現役時代を振り返って「裁判所にいて(政治的な)圧力はない。あえて言えば、忖度(そんたく)する裁判官はいる」などと話した。「若い裁判官は前例主義に毒されている」と語っていた。【朝日新聞】