福島第一原子力発電所の廃炉の今後の工程が2年ぶりに見直され、1号機と2号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める時期について、放射性物質を含む粉じんの飛散対策などを行うため、最大で5年遅らせることが決まりました。
福島第一原発の廃炉への道筋を示す工程が2年ぶりに見直され、27日、政府の会議で承認されました。
新たな工程では、1号機と2号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める時期を遅らせています。
1号機は現在の計画より4年から5年遅い、2027年度か28年度としました。
理由については、現在、水素爆発の影響で最上階に残るおよそ1000トンのがれき撤去を進めていますが、放射性物質を含む粉じんの飛散リスクがあるため建屋全体を覆う大型カバーを設置することになったためなどとしています。
2号機は現在の計画より1年から3年遅い、2024年度と26年度の間に見直しました。
建屋の壁に穴をあけて使用済み燃料プールから核燃料を取り出す計画ですが、建屋内部の放射線量が高いため、除染などの対策が必要とされたためです。
使用済み燃料プールからの燃料の取り出しは3号機ではすでに始まっていて、4号機では終了しています。
使用済み燃料プールからの取り出しを終える時期については、各号機の目標は示さず、1号機から6号機のすべてで、2031年末までとしました。
また、原子炉建屋にある溶け落ちた核燃料、いわゆる「燃料デブリ」を冷やすため注入している水や地下水の流れ込みなどで毎日170トン前後発生している汚染水については、2025年末までに1日当たり100トン以下に抑えるとする目標を盛り込みました。
一方、廃炉作業の最大の難関とされるメルトダウンを起こした1号機から3号機の「燃料デブリ」の取り出しについては、2021年から2号機で試験的に開始し、段階的に規模を拡大していくとしています。
そして、すべての廃炉作業を完了する時期については、これまでと同じく2041年から2051年として変更はしませんでした。
大きな工程の見直しはおよそ2年ごとに行われていて、今月初め、今回の見直しの大きな方針と案が示され、27日、菅官房長官らが参加した政府の会議で正式に承認されました。
廃炉の工程を取りまとめている経済産業省は「廃炉作業は早く進める必要があるが、急ぎすぎれば、作業員の被ばくや放射性物質を含む粉じんの飛散などリスクにもなる。バランスを取りながら、緊張感を持って取り組んでいきたい。廃炉を終える時期については、今、目標を変える必要はないと考えている。これからの10年が大切で、そこで精査していきたい」としています。
梶山経産相「安全を最優先に考えた」
福島第一原子力発電所の今後の廃炉の工程が見直されたことについて、梶山経済産業大臣は「廃炉は先を見通すことが大変難しい作業で、スケジュールありきではなく安全を最優先に考えた」と述べて、安全を第一に作業を着実に進める考えを示しました。
福島第一原発の廃炉への道筋を示す工程が27日、政府の会議で承認され、1号機と2号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める時期について、放射性物質を含む粉じんの飛散対策などのため、最大で5年遅らせることが決まりました。
これについて、梶山大臣は27日の閣議のあとの記者会見で「燃料の取り出しを含めて、福島第一原発の廃炉は先を見通すことが大変難しい作業だ。不確定要素が多くスケジュールありきではない。安全を最優先に考え見直した」と述べました。
そのうえで梶山大臣は、すべての廃炉作業の完了時期はこれまでと同じく2041年から2051年として変更しなかったことについて、「一つ一つの作業で難しいものが遅れる場合も、順調に進んでいるものもあり、今の時点で30年から40年後の廃炉終了を目指すことに変わりはない」と述べ、廃炉に向けた作業を着実に進める考えを示しました。
菅官房長官「安全廃炉が復興の大前提」
会議の最後に菅官房長官は「福島第一原発の安全で着実な廃炉は、福島の復興、再生の大前提だ。今後も予測の難しい困難な作業の発生も想定されるが、廃止措置を確実に成し遂げるべく、関係省庁と東京電力は、引き続き、中長期ロードマップに基づき、廃炉・汚染水対策をしっかりと進めていただきたい」と述べました。
東電 小早川社長「廃炉を安全かつ着実にやり遂げる」
東京電力の小早川智明社長は「復興の取り組みが徐々に進む中で、『復興と廃炉の両立』のもと、安全確保を最優先に、より一層のリスク低減を進めていく必要があると受け止めている。地域の皆様との対話を重ね、地元の思いや風評対策にも最大限の配慮をさせていただきながら、改訂された工程に基づき、責任をもって、廃炉を安全かつ着実にやり遂げてまいります」などとするコメントを出しました。
廃炉推進カンパニー代表「求められる作業レベル高くなっている」
福島第一原子力発電所の廃炉の工程が2年ぶりに見直されたことを受けて、福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は27日に会見を開き、1号機の使用済み核燃料プールからの燃料の取り出し開始が、大型カバーの設置で遅れる見通しになったことについて触れ、「住民の方々の帰還が進むなどして原発周辺の環境が変わっている。また、1号機上部に残るがれきは何層にもなっているなど撤去の難しさがある。こうしたことから、放射性物質を含んだダストを飛散させないために求められる作業レベルも高くなっていて、建屋全体を覆う大型カバーの設置を決めた」と理由を述べました。
また、廃炉最大の難関とされる「核燃料デブリ」の取り出しについては、「2号機は最も調査が進んでいて、現場の状況を確認して作業に取りかかれる。初めは少量になるが、繰り返すことで知見を集め、設備の改良を進めながら全量取り出しを目標に最後まで頑張っていきたい」と話しました。
一方、廃炉に関わる作業でミスが多く発生し、原子力規制委員会から改善を求められていることについて、小野代表は「ミスが多いのは、私自身気にしているところ。いかに現場を把握してガバナンスしていくか、仕組みや組織を柔軟に変えていくことも必要と考えている。人が不足している分野については外部から連れてくるなど、どういう手段で人手をあつく増やすかについても考えていきたい」と対応について述べました。【NHK】