福井県から60億円受注 元助役関連企業、県民から批判
関西電力役員らが福井県高浜町の元助役から金品を受け取った問題に絡み、県職員らの金品受領を検証していた調査委員会(委員長=藤井健夫弁護士)が21日に公表した調査報告書では、県が元助役関連企業に計60億円に上る工事などを発注していたことが判明した。調査委は「契約に問題はない」とするが、外部の利害関係者から金品を受領した不透明な実態に県民からは疑問の声も上がる。
関電は10月、同社役員ら20人が2006~18年に元助役から計約3億2千万円相当に上る金品を受領していたと発表した。一方、県の調査報告書では今回、県職員らで受領が分かったのは109人で計122万円相当に上る。多くは中元や歳暮など高価な物品ではないとするが、21人については現金や小判など「儀礼の範囲を超える金品」を受領していた。
報告書によると、福井県は1995~2019年度にかけて元助役の森山栄治氏(今年3月に死去)が顧問を務める高浜町の建設会社「吉田開発」に対し、農林水産部と土木部から約57億8600万円の工事を発注。うち入札を経ない随意契約も約1億1200万円に上った。
元助役が取締役を務めていた高浜町の警備会社にも、14~19年度にかけて約2億9500万円の業務を発注し、一部は随意契約だったという。
金品を受領した県職員らの中には契約関係にある土木部の職員もいるほか、健康福祉部や教育庁など幅広い部署が含まれていた。金品には現金や商品券、ワイシャツ仕立券のほか、純金小判(10万円相当)なども含まれており、調査委は「社会通念上、相当ではない」と批判している。
報告書は元助役への配慮が問題の背景にあると指摘。元助役は県の勉強会で客員研究員を長く務め、「地域の問題に熟知し行政に通じる第一人者として認識されていた」という。一方、感情の起伏が激しく態度が急変する人物だったとした上で「失礼があってはならないと気を遣い、金品を返却できなかった」との見方を示した。
調査委は「先輩や同僚に相談しても『同額程度の物品で返せばいい』と言われた職員もいた」としており、元助役への対応が個人任せになり県庁として組織的な対応ができなかったことが金品受領が続いていた背景にあるとした。
関電の金品受領問題でも原発立地自治体の有力者である元助役からの金品については役員らが個人で対応し、組織としての情報共有やリスク管理ができていなかったことが問題視された。
一方、調査委は県発注工事に絡み「元助役から請託を受けた事案や便宜を図った事案は確認されなかった」とし、契約状況にも問題はなかったと結論づけた。
ただ県民からは疑問の声も上がる。高浜町に住む60代の男性会社員は「モラルを守るべき公務員としてあるまじき行為で腹立たしい」と厳しく非難。「行政に対する信頼が揺らいでいる」と話した。
【日本経済新聞】