関西電力の役員らが多額の金品を受領し、会長と社長が退任する事態にまで発展した問題。取材を進めると、原発立地地域と金の深いつながりが見えてきた。問題の背景に隠れた原発誘致の闇をゲキツイした。
「よもや知らないとは申されまい、吉田開発に端を発する原子力事業本部における一連の不祥事についてであります」
これは今年3月、関西電力の岩根社長に宛てて送られた内部告発文。関電の幹部への金の流れが指摘された匿名の告発だ。
同じ文書が原発を問題視してきた中嶌さんの元にも送られてきたという。
原発反対を訴える中嶌哲演代表「3億何千万が関西電力の幹部の懐に還流していたというのは、本当にこれは、これは許しがたい。関西電力があんな被害者面、幹部が。森山さんを散々利用しておきながら、我々自身が被害者と言わんばかりのあんな記者会見はお笑い種」
岩根社長「森山の陰におびえながらですね」。八木会長(当時)「非常に厳しい言葉で、本当に激高されました」。岩根社長「全員、非常に迷惑でですね、非常に困惑をしておりまして」。金品を受け取った理由は、「森山氏の特殊性」との説明に終始した。
問題の舞台になった福井県にある高浜原子力発電所。原発誘致の立役者、高浜町の元助役・森山栄治氏らから、関電の幹部など20人が3億2000万円相当の現金、商品券、さらに金貨や金杯などを受け取っていた。
今年3月に亡くなった森山氏。原発誘致が活発だった1977年から10年間、高浜町の助役を務めた。助役時代の町長は、森山氏は人や金を動かす力を持っていたと話す。
田中通元町長「(町長の)私がロボットみたいなこともあったし、言われるがままに動いておると。(助役は)実務的には動きやすい立場でしょうな、町長から見れば」。(助役は)人を動かしやすいということか。「そうやな。それもあるし、金銭的にもね」
地元で11期、町議を務める議員は…。渡辺孝町議「森山氏が一切を取り仕切っていた。町長よりもえらい。実質な町長という役割を森山さんが持っていた」
背景には何があったのか。大きな転機は2005年。関電は大阪にあった原子力事業の担当部署を、原発がある福井に移した。その理由について…。
岩根社長(今年2月)「みなさまとの共存共栄を。共存共栄をしてきたと。ともに共存共栄していくと」
地元との会議では岩根社長のほか、1億円以上の金品を受け取った原発部門のトップ・豊松氏らが深々と頭を下げて、町長などを出迎える姿があった。地元を第一に考える「共存共栄」を目指す中で、歩む道を踏み外したのかもしれない。
さらに拍車をかけたのは、福島第一原発の事故を受けて行われた安全対策工事だ。地元への工事発注が増えたことで、より濃密な関係性が構築された。
高浜原発は住民の反発もある中、1974年の1号機の運転開始を皮切りに、4つの原子炉が完成。同時に、地元には国から多額の原発交付金が舞い込んだ。「今年3月にできた音海トンネル。原発交付金で作られた」。街中には、原発マネーでできた施設があちらこちらに点在。高浜町では、原発は生活のためになくてはならない存在となっている。
関西にも、原発候補地になった場所がある。和歌山県日高町。漁師の濱一己さんは誘致に強く反対した1人だ。「あそこの岬の先ですねん。あんなところに作られたら、毎日原発を眺めて暮さないかん」
1970年代に持ち上がった日高町への原発誘致計画。当時、住民らは猛反対したが、関電は納得させようと足しげく通い詰めたという。
濱さん「関西電力に立地部という社員がいて、社員が家を訪れて、濱さんらも漁業権放棄したら5000万円くらいもらえるんじゃないですか、お父さんももらえますね、2人で1億円ぐらいもらえるのと違いますかというて」
濱さんによると、反対派を賛成側に変えるほど、大きな影響力をもつ人物は日高町にはいなかったという。原発誘致に詳しい立命館大学の平岡和久教授は「原発財政は多額。期待する行政や政治家、地元関係者がいる中、キーパーソンが生まれた。様々な政治的、社会的な中で、キーパーソンが役割を果たした」と話す。
濱さんは当時を振り返り、こう指摘する。「原発を取り巻く話って、すべてお金がついて回って、こんなことになっている」
関西電力は年内に取りまとめる予定の「第三者委員会」による調査で、全てのウミを出しきれるのか。信頼回復への道のりは長い。
【読売テレビ】