東京電力ホールディングスが月末にも開く取締役会で、原発専業会社の日本原子力発電(原電)への資金支援を正式決定する方針を固めたことがわかった。支援対象となる東海第二原発(茨城県)の安全対策工事費が、半年前の見通しより2割近く増えて約3500億円となり、東電の支援が2200億円を超すことも新たに判明した。
原電は保有する原発4基のうち2基が廃炉作業中で、東海第二の再稼働をめざしているが、周辺自治体から同意を得られるめどは立っていない。東電は原発の経済性を理由に資金支援の意向を示していたが、福島第一原発事故で実質国有化された会社が、再稼働が見通せない他社の原発を支援することに疑問の声が出ていた。正式決定すれば批判が強まりそうだ。
東海第二からは東日本大震災で運転停止するまで、東電と東北電力が電気を買っていた。大手電力5社の今年3月時点の資金支援計画案では、安全対策工事費は約3千億円だったが、新たな計画案では約3500億円に膨らんだ。
うち約2800億円を受電割合に沿って、東電が8割の2200億円超、東北電が2割の600億円弱を支援する。残りの約700億円は関西電力、中部電力、北陸電力が担う。東電は東海第二から将来得る電気の料金を「前払い」するなどの形をとり、残る4社は原電の銀行借り入れに債務保証する見通し。
安全対策工事費が上ぶれしたのは、テロ対策施設の建設費が約610億円と試算されたことなどを受けたとみられる。原電は2年前には、防潮堤の設置など当面必要な安全対策工事費を1740億円と見積もっていたが、その2倍になる。工期が長引けばさらに費用がかさみ、運転期間が短くなる分、東電が支援理由に挙げる経済性がますます悪化する。安全対策工事費は再稼働した原発でも上ぶれが続いており、東海第二でもさらに膨れる可能性がある。
関電と中部電、北陸電は、原電の敦賀原発2号機(福井県、停止中)からの受電を根拠に、東海第二の再稼働について地元同意が得られた後に支援に加わる。だが、敦賀2号機は原子炉建屋直下に活断層の存在が指摘され再稼働が難しい。直接電気を買っていない東海第二の支援に、株主らの反発を招く可能性がある。
運転から40年が過ぎた東海第二は、昨年9月に新規制基準に適合し、同11月に20年の運転延長が認められた。だが、東日本大震災の時に外部電源を喪失し、津波で非常用発電機も1台が止まったことなどから、地元でも再稼働に反対する意見が根強い。【朝日新聞】