国内電力会社の原発再稼働の牽引(けんいん)役としての立場を担ってきた関西電力。役員ら20人が3億2千万円相当の金品を受領していた問題は、高浜原発(福井県高浜町)を舞台に発覚しただけに、今後の原発運営に影響が及ぶ可能性がある。原発への不信感の高まりを呼べば今後の再稼働の動きに水を差しかねず、業界内では警戒する声もあがる。
東日本大震災後に国内の全原発が停止して以降、原発の新規制基準に合格し再稼働を果たした原発は9基。そのうち4基は関電の高浜原発と大飯原発(同県おおい町)だ。
その高浜原発の立地地域をめぐって起きた金品受領問題に、関電の岩根茂樹社長は2日の記者会見で、「原子力への信頼に多大な影響を及ぼしたと思っている」と陳謝した。その上で、「関電は4基を再稼働させていただき、日本の原子力を支えたいという思いがあった」と述べ、原発に対する考えを語った。
金品受領問題がただちに稼働中の原発に影響することはないが、関電は来年以降に高浜1、2号機など残り3基の原発の再稼働を目指している。
再稼働には地元同意が必要だが、原発への不信感が広がれば、ハードルが上がる可能性がある。実際、地元の高浜町からは「町として(再稼働の)了解を出すとき、町民の理解に影響が出るのではと心配している。関電にはしっかり説明責任を果たしてほしい」(幹部)との声もあがる。再稼働に向けて準備を進める他の電力会社も「原発への不安が広がり、影響が出ないか」(関係者)と気をもむ。
再稼働の停滞は、多方面に影響が出る。
一つは国のエネルギー政策だ。政府が昨夏まとめた「第5次エネルギー基本計画」では、令和12(2030)年度の電源構成に占める原発の割合を20~22%にするとの目標を掲げた。目標達成には30基程度の再稼働が必要で、現状は遠く及ばない。運転中に二酸化炭素を排出しない原発は、温暖化対策にも有効だ。
また、電気料金への影響も懸念材料だ。関電が震災後に踏み切った2度の値上げは、家計や産業界を直撃した。大阪市内の金属加工メーカーは「いずれにせよ、値上げは利益を圧迫する。安定した料金での電力供給を願いたい」と話す。【産経新聞】