全国の原発から出る使用済み核燃料の保管状況が大きく変わりそうだ。現在は大半が原発内プールの水で冷やす「湿式貯蔵」で保管されているが、専用の金属製容器で空冷する「乾式貯蔵」への移行が増える見込みだ。
水を循環させるプールでの保管は、電気の供給がなければ冷却機能を失う。東京電力福島第1原発事故では、プールにあった使用済み燃料も危険な状態になることが懸念された。
一方、敷地内にあった乾式貯蔵施設は津波で浸水したが容器に異常はなく、容器内の燃料も無事だった。
一定年数の水での十分な冷却を経れば、その後は乾式貯蔵の方が安全とされ、「ベター」な選択と言える。
しかし、原発敷地内などで長期間保管される可能性も高まる。周辺住民に対し、原発を所有する電力各社は情報公開をきちんと行いつつ、安全対策の向上を図っていかなければならない。
原子力規制委員会は電力各社に対し、乾式貯蔵への転換を促している。切り替えは加速するだろう。共同通信の調べによると、全国の原発保管のうち6割以上が乾式貯蔵になる可能性がある。
「ベター」な選択ではあるが、あくまで一時しのぎの対応だ。ただ、その一時しのぎが一体どのくらいの期間を要するのか分からないのが大きな問題だ。
最終処分場が決まっていないことが背景にある。経済産業省などは、地下に埋める処分場の選定に向けて全国で説明会を開いている。ただ、昨年の釜石会場で「なぜここでの開催なのか」といぶかる声が上がったように、各地で反発がみられる。
最終処分に至るまでの過程も不透明だ。そもそも使用済み燃料は「夢の原子炉」とされた高速増殖炉に使うプルトニウムを取り出すため再処理する構想で、その後に高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を処分することにしていた。しかし、現在は再処理せずに埋める直接処分も視野に入れている。
再処理は青森県の工場完成を待って稼働する予定だが、核兵器の材料にもなり得るプルトニウムの増加に対し、国際的な視線は厳しい。そして原発再稼働により使用済み燃料はたまっていく。
先が見通せない中で続く保管。原発立地の地元から「保管が永久的になるのではないか」との懸念が出るのは当然だ。別の貯蔵場所を確保できれば搬出は可能だが、現実的には容易ではない。
「トイレなきマンション」のまま進んできたツケは重い。再稼働や再処理の是非や在り方を含め、原子力政策の総合的な再検討が必要だ。【岩手日報】