北陸電力が志賀原発(石川県志賀町)の再稼働に向けて投じる安全管理費などが経営を圧迫し、再稼働をしても原発事故が起きれば同社に回復できない損害を生じさせる恐れがあるなどとして、富山、石川両県の株主八人が十八日、会社法に基づき、金井豊社長らに原発の運転差し止めを求める訴訟を富山地裁に起こした。
横断幕を掲げながら訴状の提出に向かう原告団のメンバーら=18日、富山地裁前で
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原告団によると、電力会社の株主が原告となり、経営陣に原発の運転差し止めを求めて訴訟を起こすのは、東日本大震災以降では全国で初めて。現在停止中の志賀原発の運転差し止め訴訟は金沢地裁で係争中だが、北電本店のある富山にも波及した形だ。
原告団は金沢地裁に提訴した原告も含め、富山県の五人と石川県の三人。金井社長ら代表権のある取締役五人を訴えた。原告団は原発の再稼働を目指す取り組みが利益追求に逆行し、取締役に求められる注意義務を怠っているとして、経営方針の転換を求めている。
訴状によると、福島第一原発事故では廃炉や賠償などに数十兆円の費用がかかると試算されており、志賀原発で事故が起きた場合、北電は簡単に破綻すると指摘。原発の停止中でも年間四百五十億円の膨大な維持費がかかる上、2号機だけでも一千億円台後半の安全対策費が見込まれているとし、「再稼働に向けた活動を即刻中止すべきだ」と主張している。
原告団や弁護団などが富山地裁を訪れ、訴状を提出した。原告団の和田広治団長(66)=富山市=は「一日も早く廃炉に持ち込みたい。全ての命を放射能から守りたい思い。(富山訴訟は)北電に逃げることができないという強いメッセージになる」と語った。
北電は「訴状の中身が分からないのでコメントは差し控える」としている。
志賀原発を巡っては二〇一二年に富山、石川両県の住民が差し止め訴訟を金沢地裁に提起。敷地内の断層の活動性を調べる原子力規制委員会の適合性審査の結果が出るまで判決を待つ考えが示されており、結審は見通せていない。【中日新聞】