九州電力川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不当だとして、住民らが国を相手取って原子炉の設置許可取り消しを求めた行政訴訟で、福岡地裁(倉沢守春裁判長)は17日、住民らの訴えを退ける判決を言い渡した。住民側は控訴する方針。
2011年の東京電力福島第1原発事故以降、新規制基準に基づく原子炉の設置許可の是非を巡る集団訴訟での司法判断は初めて。
原告は鹿児島や熊本、福岡など10都県の住民33人。原告側は訴訟で「世界で最も火山のリスクが高い原発」と主張。「火山の影響を審査する基準が不合理で、判断過程に多くのミスがある」などと訴えた。一方、国や訴訟参加した九電側は「専門的知見を踏まえており、十分な合理性がある」と反論していた。
倉沢裁判長は判決理由で、火山の影響を審査する規制委の「火山ガイド」に関し「破局的噴火など極めて低頻度の自然災害が想定されていなくても不合理とはいえない」と指摘。川内原発から半径160キロ以内の5つのカルデラについて「火山ガイドに基づく審査が不合理、または違法とはいえない」とした。
原子力規制庁は「国の主張が認められたと聞いている。引き続き新規制基準に基づき適正な規制をおこなっていきたい」とコメントした。原告側弁護団共同代表の河合弘之弁護士は「噴火の確率は極めて低く無視していいというのは福島原発事故と同じだ」と判決を批判した。
川内原発を巡っては、住民側が14年、地震対策や火山の影響評価などが不十分だとして運転差し止めの仮処分を申請したが、鹿児島地裁が15年に却下。福岡高裁宮崎支部も16年、即時抗告を退けていた。
川内1号機は今回の裁判とは別に、設置が義務付けられているテロ対策施設「特定重大事故等対処施設」の完成が期限に間に合わず、2020年3月18日に運転停止となる見通しになっている。【日本経済新聞】