東京電力ホールディングス(HD)は22日、福島第一原発の廃炉作業に、「特定技能」の在留資格を持つ外国人労働者を当面受け入れないと発表した。人手不足を背景にいったんは受け入れを決めたが、21日に厚生労働省から「極めて慎重な検討」(根本匠厚労相)を求める通達を受け、方針を転換した形だ。
東電HDは22日、通達を踏まえた検討結果を厚労省に報告した。発表によると、日本語や日本の労働習慣に不慣れだったり、放射線の専門知識がなかったりする外国人労働者が現場で働けば労災事故や健康障害が発生する恐れがあり、「極めて慎重に検討する必要がある」と表明。安全管理体制の検討に相当の時間を要するとして、当面の間は就労させないことにしたという。
ただ、福島市で会見した東電福島復興本社の担当者は「この先ずっと就労させないと言い切っているものではない。検討して改善したうえでの就労はありえる」と語り、将来の受け入れはありうるとの認識を示した。
東電は22日、福島第一原発の構内で働く協力企業にもメールで厚労省への報告内容を知らせた。当面の受け入れ見送りについて、東電は協力企業にも従ってもらう方針で、23日に約50社が参加する協議会の場でも説明するという。
特定技能は、外国人労働者の受け入れ拡大のため、今年4月から始まった新たな在留資格。建設業が受け入れ対象業種になったことで東電は3月、福島第一原発の現場に受け入れる方針を協力企業などに伝えた。
だが、事故の影響で福島第一原発の構内にはなお放射線量の高い区域が残る。在留期間が最長5年の外国人労働者が帰国後も被曝(ひばく)線量などのチェックを受けられるのかと、問題視する声が上がっていた。
外国人労働者を支援する「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表理事の鳥井一平氏は「被曝労働による職業病はすぐに発症するわけではなく、何年も後になって発症することがある。厚労省の対応は当然だ」と話した。【朝日新聞】