大熊町大川原地区で7日に業務が始まった大熊町役場新庁舎。一部地域の避難指示解除に伴い、町は会津若松市から約8年2カ月ぶりに役場を町内に戻した。地域復興の拠点に町民は期待を寄せ、職員は復興加速へ決意を新たにする。
税務課で働く山浦萌子さん(19)は「すごくきれいな庁舎。会津若松の出張所の人たちと一緒に働けることを楽しみにしていた」と話した。
山浦さんは、原発事故に伴い町役場が移った会津若松市の出身。震災当時は小学校5年生だったが、通っていた小学校や英語塾には大熊町から避難してきた児童らがいた。「ぼんやりとだけれど、人の役に立ちたいという思いをずっと持っていた」と振り返る。
その思いを抱いていた高校3年生の時、担任から「大熊町役場で働いてみたらどうか」と勧められた。高校の通学路に町役場の出張所があったことや避難者が身近にいたことなどから、大熊町役場で働くことを決意した。
昨年4月に入庁し、いわき市のいわき出張所で、たばこ税や軽自動車税を担当してきた。「直接復興に携わってはいないけれど、証明書の発行など町民と接する機会は多くある。明るく接していきたい」と心掛けている。研修で昨年6月に帰還困難区域など初めて町内に立ち入った。荒廃した商店街や津波被害の残る沿岸部を目にした。「ここに人の暮らしがあったことを実感した」
震災・原発事故前の町内の様子は分からない。でも、町民や先輩職員たちなど多くの人からその経験を聞きたいと考えている。「帰還する人だけでなく、帰還しなくても町内に戻ってくる人もいる。そういった人たちの町との縁やつながりをつなげていくことを手伝いたい」と前を向く。
【福島民友新聞】