福島など8県産の水産物輸入禁止めぐり
韓国による福島など8県産の水産物の輸入禁止は不当として日本が提訴していた問題で、世界貿易機関(WTO)は11日、韓国の措置を妥当とする最終判決を下した。一審で敗れた韓国は東京電力福島第1原子力発電所事故の処理が終わらない日本の「特別な状況」を強く訴え、上級委員会で判断を逆転させた。
第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)が2018年2月、輸入禁止は不当な差別だとして韓国に是正を勧告すると、韓国は同年4月、判決を不服として上訴した。
並行して韓国の産業通商資源省、海洋水産省、外務省など8省庁を横断する「紛争対策チーム」を立ち上げた。通商分野を専門とする外部の弁護士も交え、パネルの判断を上級委員会で覆す戦略を練った。
韓国が日本だけに特別厳しい輸入禁止措置を取ることの妥当性をアピールするために引き合いにしたのが、汚染水処理や廃炉など原発の事故処理がなお続く日本の現状だ。対策チームには原子力安全委員会も加わった。
「パネルの判断は、韓国がそのような状況にある日本と海でつながる隣国であるという特別な状況について考慮していない。そこを強調した」。韓国政府関係者は語る。
もっとも、逆転勝訴は韓国にとっても驚きだった。「負けると思っていた」。ある韓国政府関係者は本音を漏らす。大手紙の中央日報によると、韓国政府は敗訴を前提に、主要省庁の担当者が集まって政府の立場を整理する「非常対策会議」の招集まで予定していたという。
原発事故後、韓国の流通・外食業界は調達ルートを切り替えた。サンマやサケはノルウェー産、タラはロシア産、ホヤは国産にそれぞれ変更した。事故から8年がたち、調達の代替ルートは定着した感がある。
地元の流通関係者は「韓国の消費者には日本産水産物への懸念が根強く残る」と指摘する。仮に日本が上級委員会でも勝ち、日本の水産物の輸入に道が開かれたとしても「販売を再開する計画はなかった」という。【日本経済新聞】