東京電力福島第一原発事故からの避難者であることを周囲に隠してきた福島県出身の16歳の少年が20日、バチカン・サンピエトロ広場でフランシスコ法王と面会した。今年11月に来日予定の法王に「福島に足を運んで、原発事故被害者のために祈ってほしい」とお願いすると、法王は少年の手を握って「行きます」と答えたという。
鴨下全生(まつき)さんは8年前、福島県いわき市で被災した。自宅は避難指示区域の外だったが、放射線量の高さを心配して、家族で都内に自主避難した。
転校先で待っていたのは、原発事故を理由にしたいじめだった。「菌」と呼ばれたり、暴力を振るわれたり。9歳ごろの願い事に「天国に行きたい」と書いたこともあった。
ログイン前の続き中学に進学してからは、避難者であることを隠すようになった。だが月日がたつにつれて、友人に何一つ福島のことを話せない自分が苦しくなった。
本当は堂々と自分のことを語りたいのに。何も悪いことをしていないのに。でも周りに受け入れられず、平和な生活を再び失うことになったら――。「心が砕け散りそうになった」
原発事故避難者の支援団体に勧められて昨年11月、自らの苦しみを法王あての手紙につづった。手紙はローマ法王庁(バチカン)に届けられ、信徒との面会行事への招待状が届いた。
鴨下さんは法王との面会後、「避難者の苦しみを伝えられた。これからは名前と顔を出して、自分の思いを語っていく」と話した。【朝日新聞】