新潟県は24日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所で重大事故が起きた場合の広域避難計画の原案を発表した。計画本編に加え、事故時の初動対応や放射性物質のモニタリングなど9項目で具体策を記したマニュアルを作成した。計画に基づき、2月6日に図上訓練を実施する。その後住民を交えた実動訓練などを踏まえ、課題を洗い出す。
計画本編ではまず「基本事項」として放射線による被曝(ひばく)を防ぐ上での考え方や屋内への退避、「安定ヨウ素剤」の服用などの対応に関して説明。さらに事故時の情報伝達の流れや避難の実施体制、県内の方面ごとに避難先候補となる自治体などを記した。
さらに個別のマニュアルや手引で、事故に備えたより詳細な対応策を示した。原発近隣にある学校での安全確保計画の策定や県立病院の避難計画、災害時の医療活動などに関して、本編に比べてより具体的に内容を説明している。
「スクリーニング・簡易除染マニュアル」では避難する住民の被曝量の調査や除染の手順に加え、作業を実施する候補地も明記。「安定ヨウ素剤配布計画」では、事前配布や緊急時配布に向けた体制整備に必要な事項などを説明している。
県は2014年に事故時の住民避難の「行動指針」を策定したが、県の具体的な対応を示したマニュアルはなかった。県は原発周辺の市町村からの要望も受けて詳細な対応を検討し、広域避難計画の策定を進めてきた。
計画は2月の図上訓練や市町村の意見も受け18年度中に正式決定する。その後も改定を加える方針だ。花角英世知事は24日の記者会見で、「これで完成ではなく、訓練やフィードバックを通じてのバージョンアップが必要だ」と話した。
新潟県は柏崎刈羽原発の再稼働を議論する前に、東電福島第1原発事故の原因や避難計画の実効性など「3つの検証」を優先している。専門家を交えた検証委員会の意見も新たな避難計画を改定する上で参考にする。【日本経済新聞】