原子力発電所から出た核燃料を一時保管する中間貯蔵施設について、関西電力の候補地選びが難航している。2018年中に予定していた公表を20年ごろに先送りした。他の電力では原発敷地内に新たに保管用施設を作る動きもあるが、地元には保管が常態化することへの警戒感も強い。使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」が滞ったまま原発の再稼働が進み、保管場所の確保が再び大きな問題になっている。
使い終わった核燃料は原子炉から取り出した後も高熱を出す。現在は大半を原発内の燃料プールで冷やしている。その後、青森県六ケ所村の工場に運び、再処理してウランやプルトニウムを取り出すことになっている。しかし、1997年の予定だった再処理工場はいまだに完成していない。使用済み核燃料をどこかに保管する必要がある。
大手電力でつくる電気事業連合会によると、全国17原発にある使用済み核燃料は2018年9月末時点で計1万8620トン(ウラン換算)。各原発の燃料プールで保管できる容量の合計2万2220トン(同)の8割を超す。東日本大震災以降に原発が停止されたため隠れた問題だったが、西日本で再稼働するようになって再浮上してきた。
稼働に遅れ
問題解決へ向けた手段のひとつが中間貯蔵施設だ。放射線を遮蔽する専用容器に入れ、建屋内を循環する空気で冷やしながら一時保管する。「乾式貯蔵」と呼ばれる方式だ。プールは電源を失うと水が蒸発して燃料を冷やせなくなるが、こうした問題は乾式では起こらず、安全性が高いとされる。
今のところ、中間貯蔵施設を建設できたのは青森県むつ市だけだ。東京電力と日本原子力発電が建設し、最大5000トンの使用済み核燃料を最長50年間保管する。原子力規制委員会の厳しい審査で遅れており、稼働は21年度になる見通しだ。
9年で容量超え
使用済み核燃料問題が最も深刻なのが関電だ。福井県にある美浜3号機、大飯3、4号機、高浜1~4号機の計7基が再稼働の前提となる安全審査に合格した。4基が再稼働し、3基も準備が進む。予定通りなら6~9年程度で敷地内の容量を超える。今後、美浜1、2号機、大飯1、2号機の廃炉も控える。原発を解体するには使用済み核燃料をすべて搬出しなければならず、中間貯蔵施設がなければ先に進めない。
搬出を考えると、福井県内の立地がベストだ。しかし、西川一誠知事の意向もあり、福井県は反対の立場だ。関電は県外で候補地を探してきたが、関西地域では引受先が見つからない。そこで、むつ市の中間貯蔵施設への搬入を模索し始めた。
一部で報道され現実味を帯びたものの、むつ市が猛反発して理解は得られなかったようだ。関電は18年中に候補地を示す方針だったが、18年12月に「20年ごろを念頭に候補を示すよう努力する」と後退させた。
九州電力は玄海原発(佐賀県)の敷地内に一時的に保管できる施設を建設する計画だ。中間貯蔵施設と同じ乾式貯蔵方式を採用する。27年度の稼働を目指し、22日に原子力規制委に申請した。燃料プールにある核燃料の間隔を狭め、より多く保管できるようにすることも申請している。
中部電力は浜岡原発(静岡県)、四国電力も伊方原発(愛媛県)で同様の施設を整備する計画、規制委による審査が続いている。政府もエネルギー基本計画に「中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設の建設・活用を促進する」と明記した。
限られた原発の敷地に建設するのでは、いずれ容量が足りなくなる。一方で地元自治体には、中間貯蔵施設を受け入れると、放射線量の高い使用済み燃料が留め置かれることへの懸念が強い。核燃料サイクル政策のひずみがここにも現れている。【日本経済新聞】