中国電力が上関町で建設計画中の上関原発を巡り、同町祝島の漁業者や自然保護団体が県に建設予定地の公有水面埋め立て免許を取り消すよう求めた二つの訴訟で、山口地裁(福井美枝裁判長)は23日、原告の訴訟当事者としての適格性を争点に絞った判決を言い渡した。福井裁判長は「いずれも原告適格が認められず不適法」として、原告側の訴えを却下した。
同訴訟は2008年提訴で、祝島の漁業者ら55人が漁業権の侵害、自然保護団体などの118人が自然や生態系への影響などを主張。係争期間が10年以上に及ぶなど長期化し、地裁は審理途中で主な争点の判断を示す手続きを取った。判決では原告適格を認めなかったため、訴訟は免許の適法性を争う具体的な審理には進むことなく、原告側の一審敗訴が決まった。
判決によると、福井裁判長は公有水面の埋め立てに同意が必要な権利者に「許可漁業、自由漁業は含まれない」との判断を示し、原告らは権利者に該当しないと指摘。漁場の埋め立てで漁業を営む権利が消滅した場合、補償を受ける権利があるにすぎず、「免許処分の当否を争う権利は認められない」とした。
原告側が埋め立て地に建設された原発に事故発生の可能性があるとして人格権を主張したのに対しては、「懸念や不安を取り除く法定手段として、処分取り消しを求める法律上の利益を認めることは困難」。また埋め立て工事による水質汚染で健康被害などを受ける恐れが原告らに存在すると認められる証拠もないとした。
埋め立て免許を巡っては、08年10月に県が中電に交付し、福島第1原発の事故で工事は中断したが、県は16年8月に延長を許可した。期限は今年7月までで、中電は延長申請に向けた準備を進めている。
判決後、村岡嗣政知事は「県の主張が基本的に認められたと受け止めている」とコメント。原告側はいずれも判決を不服として、広島高裁に控訴する方針を示した。【山口新聞】